最近、振動刺激で筋緊張緩和の報告をよく聞くようになりました。

 

うちの職場でも筋緊張の高い患者さんによく利用されています。

私も使ってみようと思い、下の絵の感じでやってました。

すると後輩が「それだと筋緊張上がっちゃうかもですよ」とこっそり教えてくれました。

 

その日はそそくさと家に帰り、さっそく調べました。

その場で後輩に聞けないのが見栄っ張りな私の悪いところです…

 

この記事は、私のように、「振動刺激今からやってみようかな」と思ってる方々に向けて書いています。

 

振動刺激って見た感じとても簡単そうですよね。

でもなんとなくやってると狙った効果の反対の効果が現れてしまう…こともあるようです。

 

目次

まず、振動刺激とは?

言うまでもなく、振動とは「揺れ動くこと。

振り動かすこと。また、その揺れ。」ですよね。

 

振動刺激はこの「揺れ」を治療に応用したものです。

 

この揺れ、振動刺激は筋緊張に以下の「変化」をもたらします。

 

振動刺激による生体への効果

①反射性の筋収縮

骨格筋に振動刺激を与えると筋紡錘が興奮し、筋収 縮が生じるとの報告があります。

この現象は緊張性振動反射(Tonic Vibration Reflex; TVR) と呼ばれています。

 

そしてこのTVRですが、以下の2つの条件下では更に強く現れると報告されています。
「筋が伸張され、張力が高い状態」

「上位運動ニューロンからの抑制が減弱している痙性などの症例」

②痙縮の抑制

H反射を用いた検討で「振動刺激中は腱反射や伸長反射などの単シナプス反射が抑制された」

「脊髄運動細胞の興奮性(筋緊張の状態を表す指標ともいえる)が抑制された」
との報告があります。

 

抑制のメカニズムについてはシナプス前抑制、PAD(post activation depression)の関与が示唆されています。

③疼痛の抑制

以上のように筋収縮を起こすこと、筋緊張を抑制するという、相反する効果があります。

「筋緊張を落とすつもりが上がっちゃった(・・;)」という事態が起こりうるわけです。私のように…

 

相反する効果の使い分け・実際の使用について

この相反する効果はどのような条件で出現するのでしょうか。

以下にまとめています。

 

筋収縮を促通する方法に関してはあまり文献がなかったため不十分と思われますがご了承ください((⌒-⌒; )

 

まず、用語の簡単な説明をしたの図でしています。

周波数

研究では40Hzから200Hzの周波数で調べられています。

値が高いほど緊張が高まりやすく、低いほど緊張が抑制されたとのことです。

 

100〜200Hz→反射性の筋収縮出現

40〜100Hz→筋緊張低下

色々な文献みると、70〜90Hz程度の周波数で皆さん筋緊張抑制を狙ってます。

たまに100Hzあたりで筋緊張抑制効果を出している文献もあります。

振幅

研究では振幅0.4㎜から2.0㎜での効果が検証されています。

結果、振幅が大きいほど筋緊張の抑制効果が高い事がわかっています。

 

この結果から、筋緊張抑制を狙う場合1.0から2.0㎜程度で実施している研究が多く見られます。

 

反射的な筋収縮促通には振幅を小さくしましょう。

 

刺激部位

筋緊張抑制の効果が筋腹、腱どちらの方がより効果的か調べられてます。

 

結果、腱に刺激した方が筋緊張抑制には効果的です。

筋腹を刺激した場合、緊張抑制効果が腱への刺激に比べて弱いうえ、不快感も多かったそうです。

 

反射的筋収縮促通には…私が調べた限り、参考になる文献はありませんでした。

肢位

筋緊張抑制には筋伸長位が良いとされています。

文献により、「最大伸長位」を推奨するもの、「軽度伸長位」を推奨するものがあり、伸張の程度は統一されていません。

 

ここで注意点です。

 

冒頭で説明したようにTVRは「筋が伸張され、張力が高い状態」「上位運動ニューロンからの抑制が減弱している痙性などの症例」で発生しやすいとされています。

 

そのため、痙性が高い患者さんへ振動刺激する際には、TVRが出現しない範囲で筋を伸長し、効果を見ながら実施することが重要です。

 

「痙性筋への振動刺激は筋緊張抑制を示さなかった」とする報告もあり、あまりにも痙性が高い患者さんには適応にならないかもしれません。

 

しかし、筋を最大伸長位にし、複数の振動刺激を同時に用いれば緊張抑制出来たとの報告があります。

 

ちょっとした装置が必要になるため、病院で手軽にするには少し大変かも知れませんね。

 

時間

筋緊張抑制を狙う場合、5分が望ましいと思われます。

3分で筋緊張抑制の効果がプラトーに達したとの報告がありますが、

この報告の対象者は健常者でした。

 

痙性が高い患者さんであれば、最初の数分間は緊張が上がり、5分程度実施すると緊張抑制に転じるとの報告があります。

 

禁忌

(文献3より一部引用)
◯創傷、瘢痕、発疹、潰瘍部位:症状を増悪させてしまう可能性があるため。

◯ペースメーカー:ペースメーカーに影響する可能性があるそうです。

◯刺激部位周辺にシャント、体内金属がある場合:シャント、金属に悪影響を及ぼす場合があります。

ご覧になっている皆様が医療従事者の場合、必ず医師の判断を仰いで使用しましょう!

注意事項

(文献3より一部引用)
◯火傷の危険:200Hz、振幅1.5㎜で2分実施すると熱が発生し、火傷の危険があるとされています。
感覚障害がある患者さんに実施する際には要注意です。

以上になります。
最後までありがとうございました!!

文献
1)Desmedt JE,et al:Mechanizm of the vibration paradox:excitatory and inhibitory effects of tendon vibration on single soles muscle motor units in man.j Physiol 285:197-207,1978

2)野間知一・他:痙縮に対する振動刺激.総合リハ39:332-337,2011

3)庄本康治:エビデンスから身につける物理療法:284-294,2017